お金(見積金額)のこと

背景 - お家のこと

昨今のインターネットの普及によって、簡単に調べられることもあり、我々の建築業界、住宅業界、リフォーム業界とも、価格について何を信じたらよいのか、何が適正なのか、エンドユーザーの皆様が少しずつ見極め出来るようになってきつつあります。

今までの建築業界、建築の工事価格が不明なところが多いと言われています。「どんぶり勘定」という言い方されるように、住宅などでは特にそういう歴史があったようです。高度経済成長からバブル景気にかけて、それに拍車がかかって、質が悪く、コストだけはそれなりの住宅がどんどん出来ました。「安かろう悪かろう」がまかり通るとともに、利益優先の「高かろう悪かろう」も横行、そして業界人のモラルの低下を招き、様々な事件を引き起こし社会から厳しい批判を受けました。その結果、業者によって金額もバラバラです。

そして不景気により、職人さんも低賃金になり、私がこの建築業界に入った頃は、「あの頃は良かった」と現場の休憩時間に職人さんが嘆く。そして、モノづくりに対する意欲、喜びの喪失。昔の、将来なりたい職業「大工」がそうではなくなりました。

不景気になってから現在にかけて、インターネットの普及が景気と反比例するかのように、増加しています。だれでもどこでも情報を調べることができます。それによって競争力が出てコストが下がっていく一方、「地震等の自然災害」により構造の質が高くなり、「地球環境の問題」により省エネの意識が高まり、「人生100年」という高齢化社会と健康志向により、断熱・気密の意識が高くなってきております。金利も安い状況が続いており、現在のエンドユーザーの皆様にとって、とても「お家の買い時」であることが言えるのです。いわば「プレミアムなローコスト住宅」という、相反する言葉が可能になっている住宅もあります。
一方で、国の問題として、「空き家問題」という既存住宅がたくさん余っている現状もあり、「リノベーション」という、家の価値を高めるリフォームをすることで、新築を選ばなくとも「リノベ」という選択肢が増えたわけであります。「リノベ」という言葉が、若年層にとっては、なんとなくオシャレな感じでファッション感覚なところが魅力的にもなってきました。ですが思ったより伸びてないことも現状にあり、最近の新築は、ローコスト住宅でもそれなりに質が良くなってきているので、リノベーションより、新築の方で、建売でも、後でDIYとかして自分たちの色にしていけば良いかも … なんていう話にもなるわけです。

だから、建売市場が伸びています。

なぜ、お家は性能が良くなってきているのに、価格が下がってきているのでしょうか?

最近のお家の特徴で言えば、コンクリートの基礎も、木造の骨組みも、内装材も、水道管、電気配線も、材料が洗練されてきており、組み立てやすく、ワンタッチ、手間も楽に、作業が素早くなってきています。また建築基準法や関係法令よる確認業務「確認申請」の審査も厳しくなり、確認申請を提出してから現場で仕様や間取り等を変えてしまうようなことがなくなっています。「検査済証」を受理されてから引き渡す当たり前の行為もなされるようになっております。工期も、半年かかっていた木造2階建てのお家も、約半分の3か月で建てられるようになってきています。それだけ経費が掛かりにくくなってきています。手戻りも少なく、現場の管理がしやすくなってきています。

さらに住宅業界では、いろいろなハウスメーカーさんが提案しているのが「家の商品化」です。

世の中のモノはほとんど商品化されています。スーパーへ行けば、食材に値段が付いています。その食材をお弁当にして、商品として売っています。文房具、本、洋服、家具、車も、ほとんどオーダーではなく、値段をつけて売っています。家も「建売」は商品ですが、今は建売ではなくても、商品はあります。何プランか設計して、いくつかのプランの中から選ぶという、例えば、「ベーシックプラン、プレミアムプラン」とか、「北欧プラン、南欧風プラン」「カフェスタイル、ビンテージスタイル」…etc. 購買意欲を持たせて、選ぶ楽しみを感じながら、自分の好みのテイストに近づける、「セミオーダープラン」の流行があります。それを、全国を駆け巡る「住宅系のコンサルタント会社」の営業さんが、売れている会社さんが使っているエッセンスを他の地域の工務店に売り込んで報酬をもらう、というやり方も流行っているようです。 次はどんな○○風?、○○スタイル?でしょうか。。

私も、住宅の設計をしてきて、「商品化」も面白いし、真似してみたいと思ったことがありました。
ただ、この多種多様な生活スタイルを持つ皆様の中の誰に、この「商品プラン」があうのか、洋服と違って、車と違って、お家は、人生で一生に一度の買い物です。一度もないかもしれない。中古のリフォームかもしれません。私たちのような小さな工務店には、もっとやるべきお家の売り方があるのではないかと思います。それは、一人一人のお客様のご要望や考え方、生活スタイル、持っているご予算を大切にする「心」です。お声をかけて頂いた方への「感謝の心」をもって、人生一度のお家をデザインさせて頂きます。そして無理のないご予算で建てられるように、ご提案させて頂きます。その人が一番望んでいる姿、ご家族の住まいを想像して、新築か、リノベーション、リフォームをご提案致します。

できるものから、小さく、コツコツ。ときをためてゆっくり。そして最善を尽くす。「お家はいいなあ」という安心感が毎日の暮らしの中にしっかりと根付いていることが何よりと思うのです。次の世代が豊かになるようにつないでいきたい。お金よりも人です。これは、名前の知られているハウスメーカーさんにはできない、名前の知られていない「小さな工務店」だからこそできることです。

私は今まで、過去20年間で11棟の新築を設計し、22棟の新築の現場監督に携わりました。リフォームでは、約600件のお客様に携わってきましたが、今でも、お客様にお会いすると喜んで頂いております。この経験を経て分かったことは、「もの・ことを大切にする心をもつ」というです。「ものづくり」に携わっている以上、「ものを大切にする感謝の心」を忘れてはなりません。決して、お客様が喜んで頂けるようなテクニックに走ってはいけない、ということです。それはあまりにも誠実ではないと思います。

住宅の商品化について

住宅は、前述の通り、「新築の商品化」「中古のパッケージ」など、商品として売っている会社もありますが、多くは商品化していない会社が多い。商品化と言っても、「この商品は、こういう見積になっております」と内訳を提示しています。住宅では、「基礎工事」「木工事」「屋根工事」「内装工事」…などの大項目から、「コンクリート打設」「フローリング張り」「雪止め取付」「クロス貼」…などの小項目があり、細部まで工事の金額を表現しています。

他の業界ではなかなかありません。「ラーメンは750円である場合、麺は200円で、具は400円で、味噌スープは100円で諸経費は50円です」なんてありませんし、見積書もありません。早く食べたいです。高価な車ですらありません。せいぜい、基本価格¥○○、オプション¥○○程度のレベルです。「エンジンは○○タイプで¥○○、エアバックはプレミアム仕様で¥○○、ボディは¥○○で、空調設備¥○○、設計料は¥○○、組立費¥○○、諸経費¥○○です。」なんてありませんよね。

住宅は見積、内訳をしっかり出さないと、お客様は納得しません。お家は人生に一度買えるか買えないかの大きな買い物だからかもしれません。お客様のエネルギーも凄いわけです。
もしくは「商品化」で合計金額は決まっていても、内容がしっかり提案されていれば、良いかもしれませんね。ですから、ラーメン750円、チャーハン600円や、トヨタの○○300万円、ホンダの○○250万円、のように、「このお家は30坪の○○風ベーシックスタイルで1500万円です。」「このお家は25坪の○○風プレミアムスタイルで2500万円です。」「このメニューの中から選んでくださいませ。」「自然素材オプションは+150万になります」「壁のクロスはこの中からですと、プラスマイナス0円です。」「ここから選ぶのは+20万円です。」など、選ぶ楽しみが出来るかもしれませんね。ファッション感覚でお家を買う感じでしょうか。。

今回、色々考えてみました。自問自答してみました。「住宅をつくる、リフォームをする」という行為に対して、どのような金額設定、見積の仕方がベストなのか。お客様にとっても、私たちにとっても、職人さん、材料屋さんにとっても。みんなが納得する金額設定です。

そこで、住宅業界の仕組みを見てみます。
モノをつくるには、大きく分けると「使う材料」と「つくる人」「使う道具」が必要ですよね。これだけあればモノが作れます。「家」になると、まずは「設計図(確認申請図書)の作成」「材料(工法)の選定、材料を運ぶ運搬車」「職人さんの選定」「つくるための重機、道具、仮設、安全対策、風雨から守る養生材、近隣対策」「工程表の作成、着工日・引渡し日の決定」「後始末(廃材処分、清掃)」「記録(工事写真、竣工図、取扱説明書)」など、より様々なことを行いながら、完成させます。そのためにお見積りをして、ご契約をして、1棟のお家をつくり上げます。たくさんの人が一つのお家に携わり、物凄いエネルギーが発生します。
一つのお家をつくり上げるために、色々な金額設定があります。金額が、坪単価が安くても、高くても、私たちがつくるお家って、変わらないんです。やることは同じです。安いから適当にやる、高いから一生懸命やる。そんなことはなく、同じことしか出来ません。正常な人は、金額が安い高いで、やり方を変えられるほど器用ではありません。どんなときでも普段通りやると思います。
ですが、会社は儲けなければ成り立ちません。儲けることは大切です。ただ、「儲ければいい」ということではありません。「儲けることが大切」と「儲ければいい」は全く意味が異なります。
「儲ければいい」という考え方は、「何をやってもいい」「結果良ければそれでいい」という考え方に通じます。そうやって儲けている人を「経営者」と呼べません。そういう人はただの「モラルのない商売人」です。

私が出来ることは、皆様のご要望や、ご予算を確認し、建築士として最善を尽くすことです。私は、ハウスメーカーさんが行うような「商品化」は無理です。なので、一つひとつ、そのご家族の個性を大事にしたお家を設計して施工することです。世界に一つだけのお家を。その方が住み手の皆様も楽しいと思います。

お見積りの作成と、諸経費の考え方

私は「お家の商品化」というのは良いと思います。ただ、私は行いません。今まで通り、ご要望をしっかり聞いて、プランをして、見積をしていく方法です。

ただ少しだけ、やり方を変えていこうと思います。お見積りの作成の仕方を変えていきます。

見積をつくるときに最もお客様が分かり難いのが「諸経費」です。
諸経費は、通常、現場経費(労務費、印紙代などの租税公課、保険料、施工図作成費、事務用品費、通信費、交通費…etc)と一般管理費(営業利益、給与手当、事務用品費、通信費、交通費、事務所の家賃、広告宣伝費…etc)から構成されております。
「経済調査会」が発行している「積算資料ポケット版リフォーム編2018」によると、新築の諸経費は工事費の10~25%、リフォームの諸経費は20~35%必要と言われております。本来ならば、見積にそのまま表現しなければなりませんが、実際はそうではありません。リフォームでは、250万円以下のリフォームの諸経費が平均7.4%だそうです。諸経費0もあるそうです。
どういうことかというと、諸経費20~35%を計上するにはお施主様の理解が得られないとあって、工事原価の中の施工単価、手間代や材料費にある程度金額を含ませて、諸経費部分を少なく見せているわけですが、正当な方法とは言えません。
お客様数人に、「見積の金額について」聞いてみました。「工事の中に利益が含まれていることぐらい知ってますよ」と。「そうじゃないと、会社成り立ちませんよね」と…。お客様はみな分かっています。
「今後は、本来必要な費用として、施主、工事業者、双方での理解を深め、本来あるべき姿を目指したいものです」とも積算資料には記載されていました。

もし、皆様が金額について、早急にお知りになりたい場合は、「経済調査会」が発行している「積算資料ポケット版リフォーム編」や、「住宅建築編」を参考にされると良いと思います。私も、参考にしておりますので、私に聞いて頂ければ、急ぎの時は、参考にさせて頂くつもりです。

よく「見積無料」と、どの業者も言っておりますし、チラシにも書いてありますし、お客様にも「見積は無料ですよね」と聞かれます。でも、実際、見積書の紙代、印刷代、調査費、交通費、通信費…etcがかかっています。ですが、「見積無料」は、もう世間で当たり前になっています。 ですがこれだけではなく、私が行いたい仕事である耐震診断や設計業務でも、中には、「耐震診断無料」と記載し、実際は、耐震補強工事等に含めている工務店があります。「設計無料」とかいう工務店もあります。すべて工事に利益がその分入っているので、結局同じなんです。 「○○無料」「○○サービス」は誠実ではありません。

それに、「設計無料」や「耐震診断無料」は結局のところ、建築士の存在価値を自ら下げていることになっています。「私は、建築士ですが、何の価値もない人間ですのでお金は要りません」と言っているようなものです。ですので、私は、設計料、耐震診断料など、建築士の業務にはしっかりと報酬を頂きたいと考えています。そのかわり、工事や材料、製品等は出来る限りお安く提供したいと考えております。それが誠実なのではないかと考えております。しっかり、「利益は諸経費の中に含まれております。工事費には利益が含まれておりません。」と伝えたいと思っております。 この見積の改革を行うことは、私の、経営者としての「使命」です。
そうすれば、お家の仕事に関係している、お客様、建築士、職人さん、材料屋さん、全てにとって良いことになります。

あるお客様には、「砂田さんて、馬鹿正直ですよね」と言われました。「砂田さんのお人柄で私たちはいつもリフォームをお願いしているんだから、大丈夫ですよ」と言ってくれます。
ありがたいお言葉です。

でも、「お見積」って、とても大事です。
その人の誠実さが現れると思います。
経営理念でもうたっている通り、「ものを大切にする感謝の心」をしっかりと持ってお見積りをして、設計や施工を行っております。
どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

砂田設計工房株式会社  一級建築士 砂田 繁人